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2020/10/08 19:57

工房訪問 / ガラス作家  安藤里実


- Satomi Ando Exhibition at MATOYA -

2020.11.7 — 11.15


来月個展を予定している安藤さんの在籍する瀬戸市新世紀工芸館を訪れ、彼女のガラスに対する思いなどを伺ってきました。


~ 無垢なガラスは私たちと似ている ~


ガラスは確かに存在するようでしないよう。

私たちは自分のかたちさえも正確に知ることはできません。

鏡や写真、人からの情報の構築で自分という人間を作り出しています。

そんな私たちが日々当たり前だと思っている世界は、本当は矛盾的で曖昧なものだと考えています。

ガラスは、本来の個々がつくりだしている世界の不思議さに気づかせるきっかけを与えてくれます。

私はそのようなガラスという素材を通して、

無意識的な感覚に潜む世界の美しさを、自分の作品により気づいて欲しいと思っています。


↑作業中に「ガラスの溶け落ちる瞬間と造形が好きなんです!」と安藤さん。溶け落ちるまで生きてるかのように変化するガラスがとても綺麗です。



~ ガラスの新たな表現方法 ~


ガラスは一般的に凛として冷たい印象を持たれることが多いですが、

安藤さんの有機的なフォルムの作品からはそれとは正反対の印象を持ちます。

フォルムだけでなく、脈理と呼ばれるガラスの屈折率の変化によって生じる筋など、

普通だと欠陥扱いされてしまう現象も自身の作風に自然と落とし込んでいます。

私が彼女の作品に惹かれる理由として、今まで見てきたガラスとは違う表現方法を見せてくれたところにあると思います。


~ 制作風景 ~

↑溶けたガラスの入った溶解炉。
↑溶解炉から溶けたガラスを棒に接着させます。
↑転がしてある程度形を整えます。
↑転がして温度が下がったガラスを温めます。基本的にはこのような作業を繰り返し行い、ガラスを大きくしながら形を整えていきます。
↑濡らしたコミック本で形を整えたり、
↑コップの底部分を作ったり、
↑空気を入れながらガラスの厚みも微調整します。
↑先程整えた底部分に新たな棒を接着し、左側を割って切り離してから口部分を整えていきます。
↑ハサミでチョキチョキ切れるのが見ていて楽しいです。

今回は実際に私もガラスを吹いたり、転がしたりと貴重な体験をさせていただきましたが、
塊のまま生きたように溶けたり、強く息を吹き込めばシャボン玉のように薄くなったりと、ガラスの表現方法の幅広さを改めて実感することができました。




安藤さんとは知人を通して1年程前に初めてお会いしました。
当時は作家として独立したばかりで一輪挿しとジュエリーのみの展開でしたが、一輪挿しが強烈なインパクトで一目惚れだったのをよく覚えています。
実は安藤さんは作家として活動する前は、5年間銀行員として働いていました。
そこから心機一転アパレルの世界に1年間身を置いた事により偶然知ったガラス作家に影響を受け、自分でガラスを触ってみたいと強く思ったそうです。その後すぐに富山ガラス造形研究所で2年間勉強し、2019年に瀬戸市新世紀工芸館の研修生として作家活動を開始します。
こうして経歴を聞いていると、凄まじい行動力と好奇心ですね...

↑一輪挿し。
↑恐竜のようなフォルムをしたビールジョッキ。

安藤さんの作品は、私が想像できる範囲を遥かに超えた造形が多いので見ていて楽しくなるのと、今後の展開を常に期待してしまいます。
11月の個展では、皆さまに作品を通して普段気づいていない美しい世界を感じていただきたいと思います。
それを実現させるシステム、面白い展示方法も安藤さんと企画していますので、ぜひこの機会に体験しにいらしてください!