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2021/07/09 20:07

工房訪問 渡部萌 / STUDIO VISIT Moe Watanabe





編組品作家として活動する渡部萌さんの工房へ伺ってきました。
作品も数点ですが買い付けてきました!
現在は山形と東京を行き来しながら製作されているそうで、今回私が伺ったのは製作をメインとする東京の工房です。山形では主に材料の採取から下準備を行っており、そちらへは秋頃取材へ行こうと計画中です。



素材の良さを極限まで活かした造形


渡部さんと会話をしていて、「カゴを作りたいわけじゃなかった」と仰っていたのが印象的かつ納得できる一言でした。

彼女の作品にはアケビ蔓の特性を活かし緻密に編まれた作品もありますが、剥いだ胡桃(くるみ)の木の樹皮を大胆に湾曲させた荒々しい作品が、樹木そのものを見ているような自然美を感じさせます。
正直な話、渡部さんの作品に出会うまで編組品(かごやざる等)とは無縁の生活でした。少なくとも民芸などを通して目にすることはありましたが、今考えるとそれはあくまで資料として捉えていたことが多かったように思えるからです。

私の視野が狭かったことはさておき、渡部さんの作品は樹齢何百年の木を見た時に感じるかっこいい、美しいという感覚に近くて、改めて作品としての自然素材の魅力に気付かされました。
荒々しくもあり素材を活かしたミニマルな構造や、編組品という概念に縛られない自由さがとても新鮮で、私が彼女の作品に惹かれた理由もそこにあると思います。

↑ 今回買い付けた作品たち。全て胡桃の木の樹皮。

↑ 胡桃の木の皮。


↑ 樹皮の裏側。剥いだ直後は白いそうですが、乾燥するとこのような色になります。


↑ 樹木の裏側を鉄媒染したもの。


↑ キハダの樹皮の裏側。このゴールドのような黄色がたまらない….。作品にするにはまだ実験段階のようなのでこれから楽しみです。


↑ 樹齢の長い樹皮。若い樹皮に比べるとかなり厚みがあります。


↑ アケビ蔓

素材の良さとは何か

素材の良さを引き出していく中で渡部さんが感じる素材の良さとは何なんだろうかと思い聞いてみると、”柔らかさ” だと返ってきました。
素材としての柔軟性もそうですが、柔らかさを一番感じるのは皮を剥ぐ瞬間だそうです。
樹皮はとても簡単に剝ぐことができ、乾燥するまでは布のように柔らかいようです。紙を切るくらいスーっといけるそう。やってみたい…。



↑ 大量の樹皮。樹皮の香ばしい香りがします。

渡部さんは大学進学を機に山形に移住しますが、そこで過ごした4年間は彼女にとって生活する上での知恵や働き方、物に対する向き合い方など本当に大きな影響があったと言います。
作家活動を始めたのはその後東京へ拠点を移してからでまだ2年程ですが、高校3年間と大学の1年間は彫刻を学んでいたこともあり他の人工的な柔らかい素材にも挑戦するも、自身の作品が産業廃棄物になることにどこか違和感を感じるようになり結局自然素材を選びます。




↑ 渡部さんの好きなモノなどがズラリ。


↑ 日常的にこれくらいラフに使いたいです。


渡部萌
1996年東京生まれ。