今回は愛知県豊明市で活動されている鮫島陽 (さめじま みなみ)さんの工房で窯詰を拝見したのでその様子をご紹介します。
鮫島さんは、炭化焼成という技法を用いて製作されています。
炭化焼成とは、さやと呼ばれる容器の中へ作品と一緒に木炭や籾殻を入れて焼成し、それらの炭素を作品に吸着させる方法です。(鮫島さんは籾殻を使用)
通常の炭化焼成は上記の行程で灰色のような複雑な表情の作品となりますが、鮫島さんの白い作品はここからさらに吸着させた炭素を焼き飛ばします。
せっかく吸着させた炭素を焼き飛ばすのでもったいなくも思ってしまいますが、低温で焼成することにより全体が柔らかい白へ、炭素が強く吸着している部分はオレンジやピンクのような色味へと変化します。中にはこの行程をさらに繰り返し、計5回焼成した作品もあります。
鮫島さんの思う美しい白を表現するためにここまでの行程を踏むのは白に対するとてつもない愛情を感じます。
作業時にお会いする時は、常に全身白の作業着を着ていて私は不思議に思っていたのですが、聞いてみると「白が好きなんです」と返ってきました。制服のような感じでスイッチが入りそうですね。
こちらは本焼成の窯出しです。本焼成とは炭化焼成する前の行程で、器として使える強度にするための焼成です。焼締なので釉薬はかけません。
鮫島さんはこの段階でも籾殻を作品にふりかけています。そうすることにより籾殻と接している面にキラキラとした結晶が現れます。
本焼成は高温のため籾殻は黒ではなく白っぽいピンク色の灰となっています。とても綺麗です。
ここから炭化焼成の準備です。
まずは籾殻をさやに敷いていきます。
さやの中にはできるだけ多くの作品を詰めていきます。
籾殻のあたり方や容器の中の位置で焼き具合が変わりますが、効率を考えとにかく詰めていきます。
リム皿の上はいい表情になるので特等席だそう。このような作品は炭素を焼き飛ばすことなくグレーのままで仕上げます。
一つ一つ窯に詰めていきますが、さや自体が重いので作品が詰まったさやを持ち上げるのはかなりの重労働です。
綺麗にさやが入って気持ちがいいです。
灯油窯を点火。後はいい表情に焼けるよう祈るだけです。